チーム・バチスタの栄光
原作を読んでグッチー先生のキャラクター設定にいたく興味を感じた私としては、そのグッチー先生を若くて美人の女医さんにしちゃうというセンスがどうにもこうにも受け入れがたく、結局、封切りでは観ませんでした。観るチャンスはあったけどどうしても観る気がしなかった。私はまだ『バチスタ』と『ナイチンゲール』しか読んでないので、グッチー先生の物語は途中までしか知りませんが、いまだにあの世界で最初から異端の存在である女医ではキャラが成立しない気がするんですよね。しかし、『ジェネラル・ルージュ』の堺雅人を観てみたかったので、その予習のつもりでレンタルDVDを観ました。
そーか、映画ではグッチー先生の物語はバッサリ切っちゃったわけね。愚痴外来成立の事情とか存在意義なんかも含めて。グッチーを単なる狂言回しと割り切っちゃったのなら竹内結子の起用も、まあいいでしょう。いや、意外にも彼女の芝居がなかなかうまいことを発見して驚きました。彼女は与えられた役割をきっちり演じていると思います。阿部ちゃんの白鳥さんも、原作とはかなりイメージが違うけれど、彼の個性がうまいこと活かされていていいと思う。狂言回しのお二人さんは、まあまあ及第点。
しかーし!! 問題は肝心のチーム・バチスタの面々ですな。7人のうちの2人が決定的にミスキャスト。
まず、大将の桐生を演じた吉川晃司。とにかくこのヒト、目ヂカラがなさすぎ。大河ドラマで織田信長をやると聞いた時も、顔はわりと信長の肖像に似ているので多少期待していたのですが、画面に登場したとたんにダア~ッ!と脱力しました。図体はデカイし声はそこそこドスがきいているし、ご本人も精一杯力んで芝居しようと努力しているのはひしひしと伝わってくるのですが、小心な小動物のような柔和な目をしているのでまったく迫力ないんですよね。この映画においても、彼が全然切れ者に見えないのが致命的です。一番重要なキャラなのに!! 彼を信長や桐生に起用した人たちって、もしかしてカッコよく「モニカ」を歌っていた頃の彼のファンだったんですかね。
もうひとりはオペ看の大友さん役の井川遥。チーム・バチスタのオペ看はもともと大友さんではなく、後輩の星野さんだったんですよね。映画でもその筋書きは採用されています。ところが、なぜ事件の発端と看護師交代の時期が一致するのかという点を、映画はバッサリ削っている!! なんでぇ~~~~?! これ、この作品のミステリー(本格推理ものに比べりゃけっこうチンケな謎なんですが)の中の非常に重要なポイントじゃないですか~~~!!! これはもう、井川遥の起用ありきで脚本あて書きしたとしか思えない。だって、原作の設定を活かすなら井川が大友さんなんてキャラ的にありえないもん。百歩、いや万歩譲って原作からの乖離を許すとしても、ベテランのオペ看のキャラクター造形としてもありえません。現実にああいうベテラン看護師はいるのかもしれませんが(事実は小説より奇なりですから)、物語のキャラとしてあまりにも説得力がなさすぎ。
でも、部分的によかったところはありました。まず、手術のシーンがリアルだったことね。いや、本当にリアルかどうかなんて素人にはわかりませんが、ちゃんと心臓を切ったり縫ったりするところを見せているのは大いに評価します。それから、出色のキャスティングが冬彦さん母子(笑)ね。冬彦ママ、もとい野際陽子はもう、定年退職してパートで外来看護師やってる元ベテラン婦長そのもの!! そのまんまそのへんの病院に置いて何の違和感もないと思います。冬彦さんがあまりにもキョーレツだったので、私もつい佐野史郎のことは「冬彦さん」と呼んじゃいますが、垣谷先生を演じた佐野は冬彦さんとはきっぱり別人です。これまた、表情や仕草やたたずまいが、個人的に知っている現役外科医とクリソツで驚倒しました。原作の垣谷先生はもっとさえない人物で、佐野の演じたキャラはちょいとカッコよすぎる気がするんですが、佐野本人は「垣谷をカッコよくしすぎるのは物語の流れ的にまずい」とちゃんとわかってますね。執刀後にずっこけるシーン(原作にはありません)が脚本にあったのか、監督が入れたのか、はたまた佐野本人のアイディアなのかは知りませんが、彼はあのシーンの意味を100%理解して演じています。すぐれたバランス感覚だと思いますね。いい役者になったもんです。
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